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24時間、365日安全な輸血ができる輸血関連情報カード

2018/08/15
 
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輸血を行った後に「輸血関連情報カード」というものをもらったけど、これってどうすればいいの?って思われている方もおられるのではないでしょうか?

 

医師からこのカードをもらう時に説明を受けたけど、わかったようでわからなかった方もおられると思います。

 

また、この輸血関連情報カードをまだ発行されていない医療機関も多く存在しています。

 

そもそも、この輸血関連情報カードって何なのか、その必要性について患者さんと医療従事者の立場で迫ってみたいと思います。

 

この輸血関連情報カードは、不規則抗体検査を行って臨床上重要な抗体が検出された場合と何らかの移植をした場合、交差適合試験と不規則抗体検査に影響を及ぼす薬剤が使用された場合に発行されます。

輸血関連情報カードの目的と記載される項目について

目的とは?

輸血関連情報カードの目的は、患者さんの情報を医療機関同士で共有して24時間、365日安全な輸血療法を行うために発行されます。

 

このカードを医療機関からもらったら、常に財布などに入れて常時携帯してください。そして、手術や輸血などを行う場合には医師にこのカードを提示してください。

不規則抗体検査

不規則抗体検査を行って陽性になり、その抗体が何なのかを調べて(同定)からその抗体名と検査日が記載されます。輸血副作用や新生児溶血性疾患を起こす抗体のみに限られます。

不規則抗体の強さは弱まっていきます

この不規則抗体は、妊娠や輸血などを行うことで抗体を作ってしまう場合があります。この不規則抗体の中には、抗体価(抗体の強さ)が直ぐに低下してしまい交差適合試験で偽陰性を示してしまうことがあります。

何の検査でもそうですが、検査には検出感度というものがあります。また、抗体は上記のように一度免疫されて抗体ができてしまうと、抗体は段々とその威力が弱まってきてしまいます。抗体が消えてなくなることはありません。

検出感度にも限界がある

交差適合試験の検出感度を仮に「3」とした場合、ある抗体の強さ(抗体価)が「2」だった場合には、陰性と判断されてしまいます。これが、偽陰性と呼ばれるものです。

輸血副作用が起こってしまう

交差適合試験が陰性だからといってその血液が輸血されてしまうと、患者さんの抗体と輸血した血液にその抗体と反応する抗原があった場合には、患者さんの体の中で血液が凝集してしまい発熱などの副作用が起こってしまいます。

 

また、患者さんが不規則抗体を持っていることを知らないで交差適合試験を行って不適合(患者さんに輸血できない血液)になった場合には、適合血(患者さんに輸血できる血液)を得るために多大な時間と労力を必要とします。

輸血関連情報カードがあった場合には

もし、輸血関連情報カードで患者さんに抗体があることがわかっていれば、慌てずにその患者さんに輸血できる血液を早く準備することができるようになり患者さんにも医療機関にとっても有益になります。

不規則抗体によっては輸血できる血液が少ない

不規則抗体があった場合に患者さんに輸血できる血液(適合血)を準備するにためには、その抗体に対応しない抗原陰性の血液が輸血されますが、不規則抗体の種類によっては抗原陰性の血液がみつからないこともあります。

 

たとえば、患者さんに「抗E」という抗体があれば患者さんに輸血する輸血用血液は「E抗原陰性」の血液になります。この抗体の適合率は50%ですのでそんなに苦労することはありません。

 

しかし、中には適合率が0.06%(約1500人に1人)などの抗体もあります。また、抗体は1つだけとは限らず2つや3つも一緒に持つ(複合抗体)場合もあります。こうなるとさらに患者さんに輸血できる血液がなくなってしまいます。

移植歴情報

移植をされた場合に、患者さんの血液型・ドナー血液型・移植臓器名・移植日が記載されます。骨髄移植などを行っていると血液型を決めかねることがあります。

 

このような際に、この移植歴の情報があると血液型検査の時に大変役立ち、時間や労力を無駄に使うことが避けられ、血液型を決定することができます。

投薬情報

輸血を行う上で、交差適合試験などに影響を及ぼす薬剤を使用した場合のみに記載されます。1例として多発性骨髄腫治療薬(抗CD38治療薬)ダラツムマブ(ダラザレックス)が最も有名です。

 

もし、この薬剤が使用されていたならば、不規則抗体検査や交差適合試験が陽性になりますが、使用情報があれば精査に無駄な時間と労力を避けることができ、適合血を準備する時間が短縮できるようになります。

医療機関によってカードを発行していない理由は?

残念ながら、全国すべての医療機関でこの輸血関連情報カードが発行されていないのが現状です。

 

その理由を私なりに考えると、自施設での不規則抗体検査の結果に自信が持てない、マンパワーの問題、不規則抗体や移植情報、薬剤情報の重要性を理解していないなどが挙げられます。

日本輸血・細胞治療学会の試みとは?

日本輸血・細胞治療学会では、2017年9月20日 にこの輸血関連情報カードの推進を勧めるためアプリを公開しました。

 

また、厚生労働省の「輸血療法の実施に関する指針」にも臨床上重要な抗体が検出された場合には、常時患者さんに携帯させることが望ましいと記載されています。

 

そのため、近い将来的にはすべての医療機関で輸血関連情報カードの発行が望まれます。

まとめ

輸血関連情報カードは、医療機関にとって貴重な情報源になります。また、患者さんにとっては安全な輸血ができるメリットがあります。

 

そのため、このカードは患者さんと医療機関の両方にWINWINの関係をもたらす魔法のカードともいえるのものです。

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