血液検査結果が日本中どこでも使える日がく~る~!

少し前の統計のデータですが、厚生労働省から発表された2010年度医療費総額は37兆4202億円、また75歳以上の高齢者の医療費は12兆7213億円でした。

WHO(世界保健機関)によると日本の2010年度のGDPに対する医療費の比率は9.2%、医療費総額に対する公費負担率は80.3%でした。

先進国の平均値と比較して、GDP( 国内総生産)に対する医療費の比率は低いが医療費総額に対する公費負担は諸外国の中でも最も高いグループに属しています。

また、 その増加率は2000年から2010年までの10年間に24.1%増 大。GDPを上回るベースで増大傾向です。

このままでは、我が国の人口動態(少子高齢化)を考えると今後の保健医療制度自体が危ぶまれる状況にあることをご存知でしょうか?

このために臨床検査技師が行っていること

私が所属する「社団法人 日本臨床衛生検査技師会」は、医療費節約のため行っている事業の中に「検査データ標準化事業」があります。

 

これは、日本中どこの医療機関で採血をしても同じ精度の保たれた検査結果を出せるように管理、指導を行うといったものです。

各病院で検査結果が違っていた

患者さんにしてみれば、どこで採血しても検査結果は同じと思っておられるでしょうが、 ところがそうではありませんでした。

試薬も違うし参考値も違うといったことがまかり通っていたため、行く先々の病院でそれぞれ検査を受け多額の検査料金を支払うことになっていたのです。

同じ検査結果が利用可能になりつつある

同じ精度で検査結果を利用することが可能となりつつあります。このことは取りも直さず医療費の節約につながるのです。

 

これからの臨床検査技師には患者さんに精度の保たれた検査結果を効率的 ・迅速に提供する技術と知識が求められるとともに、将来を見据えた計画的な環境整備や医療行政の健全化に貢献できるスキルが必要と考え ています。

なぜ、今まで検査結果が共有できなかったのか?

糖尿病の患者さんは、血糖値を測定しコントロ ールしていますが、血糖値というのは血液中のグルコースという物質を測定しています。

 

私の勤務する病院では、自動分析装置を使い約15分位で検査結果が提供できるのですが、この検査結果が十分信頼できるものであるかが重要になります。

たとえば、100mg/dLの血糖値の患者さんの検査結果が98mg/dLに表示されることもあります。これが測定誤差です。

 

しかし、分析装置の管理に何らかの不備があり40mg/dLにしか表示されない 場合、患者さんはどうもないのに緊急で血糖値を上げるようグルコースの点滴をされることになります。こうなると許されない誤差となります。

また、施設により使用している試薬も違うし参考値も違っていました。これらのことにより、今まで検査結果が共有できなかったのです。

精度管理について

私たち臨床検査技師は、上記のような事が起こらないように誤差を1~ 2%程度に収まるようコントロール血清というものを用いて毎日管理を行っています。これが、内部精度管理と呼ばれるもので病院内での精度管理になります。

データ標準化事業とは?

これとは別に、平成19年より日本臨床衛生検査技師会ではデータ標準化事業を 展開しています。年間1億円以上の予算を組み全国どこでも同じ尺度で検査結果が利用できる環境を整えようといった主旨の事業です。

 

同じ検査結果を提供するためには、標準化さ れた検査方法を使い、基準となる血清で検査結果にズレがないか毎月確認作業を行います。

 

つまり内部精度管理が十分に行われている施設で、月に1回以上は基準となる血清を測定し許される誤差範囲に収まっているかを継続的に評価しているのです。

 

ここまでくれば、違う施設でも同じ尺度で検査を受ける環境は整っているはずですが、まだ基準範囲は施設ごとに違っています。

例えば、コレステロールの基準範囲が 128~ 220mg/dLの 施設と128~230mg/dLの 施設があるということです。

 

最初の施設で検査した患者さんが225mg/dLの値であれば、コレステロール高いですよ 、といわれ後の施設であれば、正常範囲ですよ 、となります。

共用基準範囲導入へ

これではいけませんので、私たちはBMI、 飲酒、喫煙などの条件をしばり、全国 6345名のボランティアの健康な基準個体より共用基準範囲を導き出しまし た。

 

調査結果解析、統計処理、パブリッ クコメントの手続きが終了し 、当院でも 共同基準範囲を使用しています。

 

このような環境整備を行い、日本臨床衛生検査技師会の調査に合格すると「精度保証認証施設」として登録されます。

 

当院では 、採血室の受付入り口に掲示してある金色のプレートが「安心、安全な検査」を受けられる施設の証拠です。

終わりに

このように日本臨床衛生検査技師会は、医療費削減のため「検査データ標準化事業」を行っています。

 

近い将来には、どこの施設でも同じ検査結果が表示されて、その検査結果を他施設でも使用できる日がきます。

 

そのためには、多くの施設が「精度保証認証施設」になり金のプレートを掲げなくてはなりません。

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